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ストック経営とフロー経営
税理士は、「ストック経営」。司法書士や弁護士は、「フロー経営」。知り合いの司法書士に会うと、税理士のストック経営は、我々司法書士と比べて、羨ましいと話されます。確かに税理士業は、有難い経営の形態だと思います。「ストック経営」とは青田刈りをするのではなく、作った事業の仕組みの中で利益が生まれる状態にする経営のこと。「農耕型経営」ともいえます。程度の差はあれ、税理士事務所の収入の大半は顧問先からの定期的な収入です。つまりは顧客と見込客が滞留している状態といえます。「フロー経営」とは、目の前の利益を短期間に得ようとする経営のこと。目の前に現れた顧客は、今後現れるかどうか分かりません。「狩猟型経営」ともいえます。司法書士しかり、弁護士しかり、ハウスメーカーの建築事業もそうでしょう。半年先の売上を読むことが難しい経営形態です。
思考の時間
しかし、「フロー経営」の中にも「ストック経営」を戦略的に構築することは不可能ではありません。戦略的な「農耕型ストック経営」を生み出すために必要なものは、正しい知識からくる仕組みづくりと、何よりもその仕組みを思考する社長の時間的余裕です。スケジュールの大半をお客様から決められ、時間の主導権は相手。朝から晩までバタバタと動き回っている社長に戦略を練るために思考の時間を意識的につくるようにアドバイスしても、なかなか難しいのが現状のようです。人手不足の昨今はなおさらかもしれません。SNSやニュースやメール、携帯電話の着信。色んな情報が次々に入ってきます。しかし、戦略的であればあるほど、隙間時間ではなく、ある程度まとまった思考の時間が必要になってきます。戦略と戦術が業績に占める重要度の割合は、7:3といわれます。そして、戦略と戦術の効果性の比率は6:1。24時間という限られた時間のなかで、どれだけ目標に沿った時間を費やすことができるか。「目標に対する無駄」を削減し、「何が業績に対して最も効果的な仕事なのか」という優先順位をつけていくのが肝要です。
ソフトバンクの孫正義氏は福岡での起業時、1年半の間、事業活動をせずに、「始めた(戦略を練る)ら、それ以外のことには手を出さない」という決意のもと、様々な情報を収集し、多くの事業アイデアの中から目標や戦略を徹底的に考え抜きました。当時、思考ばかりに時間を割き、事業活動をしない孫氏に対し、従業員が給与をもらえるか不安がっていたというのは有名な話です。
限られた時間のなかで思考の時間をいかに作り出すか。これもまた社長の大切な仕事なのかもしれません。願望エネルギー(情熱)の高い人は、先の先を見据え、思考の時間を作り出します。願望エネルギー(情熱)の低い人は、目の前に起こることしか関心が及ばないためその活動は戦術的となり戦略的仕組みを構築できていないのかもしれません。。。
2019年12月1日/新田哲也