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ある農夫の1日
ある農夫が、朝早く起きて畑を耕そうとした。ところがトラクターの燃料が切れていたので近くまで買いに行ってきた。途中でブタの餌をやっていないことを思い出して納屋に餌を取りに行った。すると、ジャガイモが発芽しているのを発見した。 これはいけないと思い、ジャガイモの芽をとっているうちに暖炉の薪が無くなっていることを思い出して薪小屋へ足を運んだ。薪を持って母屋へ向かっていると、ニワトリの様子が変である。どうも病気にかかったらしい。 とりあえず応急処置を施して、薪を持って母屋にたどり着いた頃、日がトップリ暮れていた。農夫はヤレヤレ何かとせわしい一日であったと思いながら、一番大切な畑を耕すことができなかったことに気が付いたのは床に入ってからであった。
戦における戦略
「ある農夫の1日」、いかがでしたでしょうか。農夫の1日の過ごし方でしたが、1月や1年スパンで考えても、思わずドキリとするような方もいらっしゃったのではないでしょうか。つまりは、計画性がなく何かに流されるままに動いている状態です。 戦国時代には軍師がいました。日本の戦国時代でいえば黒田官兵衛。三国志でいえば諸葛亮孔明が有名。彼らは出陣するにあたり味方の戦力と敵の戦力、自然の地形と人工的な地形、時流や時々の環境を総合的に熟慮し、いかにして戦えば勝つことができるか、あるいは、いかにして戦えば戦力を失わずに済むか、負けずに済むか、出陣前に練りに練り、周到に準備したうえで自軍を戦に送り出します。出陣してしまえば、兵士は軍師の戦略どおりに進むのみ。農夫のようにいきあたりばったりに行動し、出たとこ勝負というわけにはいきません。 なぜなら、失敗すれば、すなわち自軍の滅亡を意味し、兵士らの死が待っているからです。 しかし、戦のように経営における目的や目標、経営戦略や戦術をはっきりと認識して、計画的に動けている経営者はそう多くないような気がしています。様々なものにチャレンジし、上手くいかなかったら違う試みを始め、いちかばちかで動いてみる。そこにいる社員(兵士)はいつのまにか疲弊し、自身も何をやっているのかいまいち全体像が見えていません。これが戦であったらどうなっていただろうと不安を感じることもしばしばです。
実行手順とウエイト付け
軍事学を基とした経営の実行手順は、願望→目的→目標→戦略→戦術と流れていきます。 パレートの法則、ランチェスター法則、オペレーションズリサーチからウエイト付けを導き出せば、その重要度は願望53%、目的と目標で27%、戦略13%、戦術7%となります。精神的な側面である願望を除けば、目的と目標で57%、戦略が29%、戦術が14%になります。目的と目標を戦略的な要素ととらえれば、戦略と合わせて86%になり、戦術との比率の差は、6対1となります。戦と同様、経営も「事を起こす前に決めておく事」と考えると、まさに「段取り8分」と言えるのではないでしょうか。それだけ市場に出ていく前の経営戦略が大事だということが分かります。 経営の目的は1位づくり。目標は、商品・地域・客層の事業領域の設定。事業領域の設定で業績の大半は決まってくるのです。