平成27年1月1日以降に開始する相続について、基礎控除額を引き下げるとともに、最高税率を55%に引き上げる等の税率構造の見直しがおこなわれます。見直しにより、従来よりも相続税の申告が必要な者及び相続税額が高くなる者が増加する見通しです。相続税対策の⼀つとして、今回は生前贈与(暦年贈与)を取り上げてみます。
目次
生前贈与
相続税は、相続財産(正味の財産)が基礎控除額を超える場合に課税されます。
例)夫が死去。妻と子供2人が財産を相続する。(法定相続人3⼈)。相続財産合計:6000万円
上記の例の場合の基礎控除額は、
・平成26年まで 5,000万円 + 1,000万円 × 3⼈(法定相続⼈)=8,000万円
・平成27年1⽉1⽇以降 3,000万円 + 600万円 × 3⼈ =4,800万円
相続財産は6,000万円ですから、何の対策も取らなければ基礎控除額を超える1,200万円の相続財産について27年以後の相続からは課税されることになります。
相続税の節税対策として、生前に財産を贈与すること(生前贈与)により、被相続人の相続財産を分散(減少)させることができます。生前贈与(暦年贈与)は贈与を受ける者1⼈に対し年間110万円の非課税枠があります。贈与した財産の額が110万円以下であれば贈与税の負担はなく財産の移転が可能です。相続財産を分散(減少)させるために有効な手段の⼀つです。
非課税枠が年間110万円と限度はありますが、対策をとる期間が長ければ長いほど若しくは受贈者が多いほど、生前贈与をおこなうことで相続税の節税効果が増します。
生前贈与の注意点
生前贈与をおこなう際には、特に以下の点に気を付けておきましょう。
●生前贈与加算…相続人が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合、その3年以内に取得した財産を相続税の課税価格に加算しなければなりません。
●連年贈与……例えば、毎年200万円ずつ10年にわたって贈与することが贈与者と受贈者の間で約束されている場合、「総額2,000万円の贈与を10回に分けておこなっている」とみなされ、2,000万円に対して贈与税が課される可能性があります。
●名義預金……例えば、父が子の預金通帳に毎年金銭を振り込んでいるが、子はその通帳の存在を知らないまたは、知っていても自由に使えない場合は贈与ではないとみなされる場合があります。その場合、名義は子であっても相続財産の対象となります。
贈与とは、自己の財産を無償で相手方に「あげる」意志を示し、相手方が「もらう」と受諾することによって効力を生じます(双務契約)。贈与の事実を明確にするためにも、贈与契約書を作成して贈与額を決定し、できれば贈与する日や贈与額も毎年変えておくなどの対策を講じておくとよいでしょう。
相続対策をおこなうにあたって
対策をとることも大切なことですが、無計画で目的が明確でない贈与は自身の老後を脅かすことにもなりかねません。生前贈与したばかりに老後資金が不足してしまっては元も子もありません。老後のライフプランから資金計画を立て個々に応じた対策をとっていく必要があります。まずは、現在ある財産の価値を試算し、相続税が発生する可能性があるか、相続対策が必要かを知ることが、ご自身、そして遺された財産を受け取るご家族にとっても大切です。