『捨てられる銀行』
橋本 卓典
講談社
金融機関の方々は、
み〜んな、読んでいるんでしょうね。
この本が世に出た意義は大きいですね。
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顧客本位の営業とは無縁の飽くなき貸出規模の拡大と低金利での貸出競争に明け暮れ、
地元企業の苦境や人ロ減の末路に目を向けていないとしたら、地銀は一体何のために存
在するのか。
人工知能(AI)が囲碁のプロ棋士に勝利し、大学入試に挑戦するようになった。
この先、顧客に低金利以外の価値を提供できない銀行はAIに取って代わられ、見捨てられ
るのではないか。6p
銀行の仕事は「貸す」ことだけではない。貸した後のフォロー、企業が苦境に至った場合の
事業再生までが、極めて重要な地域金融の役割だと言っても過言ではない。繰り返すが保証
制度には、事業再生という機能が存在しない。地域金融機関にしか担えない最も重要な責務
が事業再生なのだ。そして事業再生をしなくても良いと多くの地銀に思わせ、行動を変えてし
まったのが皮肉にも保証制度の代位弁済なのだ。128p
「地域金融を通じて、地元の活性化に貢献したい」しかし、理想と現実は異なる。営業担当に
なれば、ほぼすべての金融機関で何らかの形の営業目標を課せられる。人事評価でマイナス
評定をつけられ、同期の中で埋没してゆかないためには、重圧に押しつぶされそうになりなが
ら必死に顧客が必要ともしていない融資契約を取り付け、金融商品を売り込んで、ノルマをこ
なしてゆかねばならない。164p
顧客の創業から事業再生までの幅広いサービスを提供できる組織体制、人材教育とノウハウ
の蓄積も怠らない顧客にとって最適な借り入れになっているのか、無理のない返済になってい
るのか、資金繰りまで踏み込んだ提案をしなければならない。経営課題の解決策を提案でき
ているのか、それが顧客の成長や再生につながっているのか。そうしたサービスを長期間続
ける信頼関係を顧客と築けているのかり全職員をこうした取り組みに本気で向かわせるため
の最適な人事制度、営業体制、ガバナンスとなっているのか。経営トップは360度の評価に
耐えられる人材か。本当に地域にとって必要な金融機関なのか。今こそ問われている。森金
融庁が取り組まねばならぬ次の課題だ。241p