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経営者の本棚

BOOK TITLE

著者
凍

『凍』

沢木 耕太郎

新潮文庫

 

 

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んーーー。

最高っっっに、面白かったです。

『深夜特急』以来の沢木耕太郎。


山野井夫妻の自由な生き方と、

ギャチュンカンでの壮絶な10日間に

打ちのめされた感じ(笑)


こんな本をいつも読めたら、

ほんと、幸せです(^^♪

 

 

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なんとか妙子が削った十センチ足らずのテラスとも言えないテラス、棚とも言えない棚に腰を

掛けてビバークすることにした。七、八センチでも、平らならまだ救われたかもしれない。

だが、谷に向かって斜めに下がっているようにしか削れなかったため、ずり落ちそうになるのを

必死にこらえなくてはならなかった。214p

 



使い終わったコンロとコッヘルをザックにしまうと、もう何もすることがなくなった。

あとはただ朝になるのを待つだけだ。

そのときだった。上の方で凄まじい音が発生した。

かすかな地響きと共にその音が近づいてくる。雪崩だ!217p


 


この絶望的な状況の中でも、二人は神仏に助けを求めることはしなかった。

ただひとつ、山野井は心の中で、この圧倒的な自然というものに対して呼びかけていたことがある。

どうか小さな自分たちをここから叩き落とさないでほしい、と。

二人は、巨大な雪崩が起きないことを願いつつ、朝になるのをじっと待った。




もしかしたら、妙子は死んでしまったかもしれない。

自分はスリングとロープに二方から引っ張られ身動きが取れないが、もし死んだのならロープ

を切らなくてはならない。しかし、手元から切るわけにはいかない。手元から切るということは

妙子の死体を氷河上に落とすということであると同時に、ロープを捨てるということも意味する。

ここからロープなしでは降りられない。225p




自分には心臓が鼓動を打つ力も残っていないように思えた。

「ああ、心臓が止まる、止まる……」

妙子に言った。

「死ぬ!死ぬ!」

とも口走った。


「背中を、背中を叩いてくれ……」

心臓にショックを与えないと鼓動が止まりそうに思えたのだ。

どこでもいいから座りたかった。しかしどこにも座れない。もう自分は本当に死ぬのかと思った。

239p




「そんなに簡単には死なないよね」

死ぬ人は諦めて死ぬのだ。俺たちは決して諦めない。だから、絶対に死なない。

「うん、死なない」

山野井はそう答えながら、黙ったままじっとしている妙子を見て、ふと不安になって声を掛けた。

「生きているか?」

すると妙子が返事をした。

「生きてるよ」

山野井は少し安心したが、そのうちに妙子は嘔吐もしなくなった。

「生きてるか!」


山野井が怒鳴るように言っても、妙子は反応しない。

「生きてるか!」

山野井が返事のない妙子の体を揺すった。すると、しばらくして答えが返ってきた。

「うん……」

やがて、妙子はうとうととし、山野井も膝に顔をうずめて眠りはじめた。

276p


 

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