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2020.01.01

競争という束縛

地銀総資産首位の横浜銀行と同3位の千葉銀行が包括提携を発表しました。


長引く超低金利や人口減少で銀行の経営環境が悪化するなか業界の生き残りを


かけたシェア争いが加速しています。提携前の地銀総資産ランキングは次のよ


うになっており、今回の包括提携により1位と3位を合算すると2位の福岡銀行


との差は大きく開くことになります。



1位 横浜銀行 総資産16兆8099億円


2位 福岡銀行 総資産16兆7105億円


3位 千葉銀行 総資産14兆8916億円


4位 静岡銀行 総資産11兆8195億円


5位 常陽銀行 総資産10兆5626億円






■競争という束縛


我々は日常、受験や選挙、戦争や喧嘩、企業間のシェア争いというように、競争


という束縛に晒されています。競争という束縛から逃れられない以上、競争に勝


つ術を持っている者は強く、その逆は衰退の一途となってしまいます。


競争においては勝ち方の法則が存在します。物理の法則であり、占拠率の科学で


あり、逃れられないランチェスター法則です。ランチェスター法則は、2社間或い


は複数間における勝ち方、占拠率を向上させていく戦略の仕組み、あるいは何%と


れば安全圏だとかいう目標についての科学的な指標を与え、これに基づく経営を行


っている大企業は枚挙に暇がありません。凡そ大企業は目標に売上額を置くのでは


なく、業界間のシェア率獲得に目標を置いています。





■占拠率のパターン


市場における占拠率には、パターンが存在します。「分散型」「二大寡占型」「相


対的寡占型」「絶対的寡占型」4つです。横浜銀行と千葉銀行が包括提携するまで


のシェア争いはほぼ団子状態。つまり、「分散型」の状態でした。


分散型はそれぞれの力関係がどれをとってもルート3以内の状態をいい、1位のシェ


アといえどもシェア率は25%以下となっているのが特徴です。1位は2位を、2位は


3位を足元の敵を見做している状態です。


市場において、「絶対的寡占型」となるには1位はシェア40%が必要となり、40%


をとると2位と3位の間で競争が一段と激しくなり、1位は利益効率が格段に良くな


り、絶対的寡占型へと走り始めることとなります。



今回の包括業務提携により、横浜銀行と千葉銀行は市場におけるシェア47%を一気


につかみ、2位との差は2.25倍となり、絶対的1位の要件である「2位以下に1.73倍


の差」をはるかに超えることとなりました。






■法則性


占拠率の4つのパターン変動には法則性があります。一般的には、「分散型」「二


大寡占型」「相対的寡占型」「絶対的寡占型」の順でパターン推移していくことと


なります。その間、2位はジグザグ上下しながら次第に落ちていき、3位は上がり下


がりを繰返しながら微増、4位は殆ど横ばいで、5位は1位が40%の大台に乗る頃に


途中から脱落、結局1位だけが次第にシェアを伸ばしていくこととなります。



地銀は上5行だけではありませんが、便宜上5行間でシェア争いが行われていると仮


定して書かせていただきました。銀行は地銀だけではなく都市銀行も存在します。


1位となった横浜銀行と千葉銀行を合算しても都市銀行の数字には及ばないでしょ


う。ここにランチェスター法則の肝があります。それは、「あるカテゴリーにおい


ての1位」だということです。






【新田 哲也】


2019.12.01

思考の時間

■ストック経営とフロー経営


税理士は、「ストック経営」。司法書士や弁護士は、「フロー経営」。


知り合いの司法書士に会うと、税理士のストック経営は、我々司法書士と比べて、


羨ましいと話されます。確かに税理士業は、有難い経営の形態だと思います。


「ストック経営」とは青田刈りをするのではなく、作った事業の仕組みの中で利益


が生まれる状態にする経営のこと。「農耕型経営」ともいえます。


程度の差はあれ、税理士事務所の収入の大半は顧問先からの定期的な収入です。


つまりは顧客と見込客が滞留している状態といえます。


「フロー経営」とは、目の前の利益を短期間に得ようとする経営のこと。


目の前に現れた顧客は、今後現れるかどうか分かりません。「狩猟型経営」とも


いえます。司法書士しかり、弁護士しかり、ハウスメーカーの建築事業もそうで


しょう。半年先の売上を読むことが難しい経営形態です。





■思考の時間


しかし、「フロー経営」の中にも「ストック経営」を戦略的に構築することは不可


能ではありません。戦略的な「農耕型ストック経営」を生み出すために必要なもの


は、正しい知識からくる仕組みづくりと、何よりもその仕組みを思考する社長の時


間的余裕です。スケジュールの大半をお客様から決められ、時間の主導権は相手。


朝から晩までバタバタと動き回っている社長に戦略を練るために思考の時間を意識


的につくるようにアドバイスしても、なかなか難しいのが現状のようです。


人手不足の昨今はなおさらかもしれません。SNSやニュースやメール、携帯電話


の着信。色んな情報が次々に入ってきます。しかし、戦略的であればあるほど、隙


間時間ではなく、ある程度まとまった思考の時間が必要になってきます。



戦略と戦術が業績に占める重要度の割合は、7:3といわれます。


そして、戦略と戦術の効果性の比率は6:1。24時間という限られた時間のなかで、


どれだけ目標に沿った時間を費やすことができるか。


「目標に対する無駄」を削減し、「何が業績に対して最も効果的な仕事なのか」


という優先順位をつけていくのが肝要です。



ソフトバンクの孫正義氏は福岡での起業時、1年半の間、事業活動をせずに、


「始めた(戦略を練る)ら、それ以外のことには手を出さない」という決意のも


と、様々な情報を収集し、多くの事業アイデアの中から目標や戦略を徹底的に考


え抜きました。当時、思考ばかりに時間を割き、事業活動をしない孫氏に対し、


従業員が給与をもらえるか不安がっていたというのは有名な話です。



限られた時間のなかで思考の時間をいかに作り出すか。これもまた社長の大切な


仕事なのかもしれません。願望エネルギー(情熱)の高い人は、先の先を見据え、


思考の時間を作り出します。願望エネルギー(情熱)の低い人は、目の前に起こ


ることしか関心が及ばないためその活動は戦術的となり戦略的仕組みを構築でき


ていないのかもしれません。。。






【新田 哲也】


2019.11.01

芸人のブランディング

話し方、聞き方、笑いの取り方、空気のつくり方...。


お笑い芸人の技術力って素人と比べると比較にならないほど長けていますよね。


さすがプロフェッショナルだなと思います。同じ言葉を発しても、片方は笑いが取


れ、片方は反応がない...。


この違い、いつかその肝を勉強したいなって思っています。




先日NHKの番組「芸人先生」でアンジャッシュ、特に渡部さんが自身の経験を踏ま


えて大手航空会社の社員に「ブランディング」について講座をしていました。


航空会社の社員の皆さんが熱心に2人の話に耳を傾けメモをとっている様子が印象


的でした。


ランチェスター法則と繋がることがあったので少し内容をご紹介いたします。






■ 高校野球で1点突破


テレビ番組の高校野球大好き芸人でよく取り上げられる渡部さん。以前から大の


「スポーツ好き」だったそうですが、なかなかスポーツ番組やスポーツの仕事が依


頼されることはなかったそうです。


そこで当初は「高校野球」に特化して売込んでいったとのこと。


周囲に、「高校野球は紅白戦、練習試合、練習まで見に行きます!」と豪語。


「アメトーク」で話される過去の大会や選手の話題にも実際とても詳しいですね。


依頼側は「そんなに渡部が高校野球のことに熱を入れているのならプロ野球のキャ


ンプに行って取材をしてもらおうか」と。で、プロ野球のキャンプに行って野球好


きのイメージがついてくると、今度はスポーツ全体の番組を任せてみようかと次々


に仕事が舞込んでくるようになったとのことでした。


ランチェスター戦略でいう「一点突破」若しくは「各個撃破主義」ですね。


恐らく、最初から「私はスポーツ全般が好きです」では、数多くの芸人(芸能人)


のなかでは目立っていなかったと思いますし、今ほど認知されていなかったでし


ょうね。






■ 漁港すしで1点突破


渡部さんは大の「お寿司好き」だそうです。しかしこれも同様、「食べモノが好


き」は芸能人のなかには沢山います。きっと、「お寿司好き」で売出し、日本各


地の名店を食べ歩いたことのある人たちも少なくはないでしょう。


そこで彼が考えたのが、「漁港寿司」だそうです。「日本全国、漁港に行って、


漁師さんが食べている食堂だったり、とれたてのものを握ってくれるお寿司屋さ


んを回るのが趣味なんですよ~!」とあちらこちらで言ってたら、有名なグルメ


雑誌で記事を書いてみないかというところから、「渡部の漁港寿司巡り」という


のが始まって、渡部ってそんなに食べ物のために全国熱心に行くんだなっていう


ブランディングができたとのこと(笑)


そうなると、漁港寿司だけではなく、お寿司、そしてイタリアンやフレンチまで


食べ物全般について語らせてみよう、、、というように仕事が舞い込んでくるよ


うになった。これもそうですね、いきなり「私、料理に詳しく、グルメです」で


は今の地位にはたどり着いていないだろうと思います。






■ 掘り下げる


「ブランディング」は、企業にとって長期的な戦略になります。


長い時間をかけ作り出したブランドのイメージ。「○○といえば○○」。この認知


が拡がれば拡がるほど、短期的なプロモーションやマーケティングは有利になっ


てきます。アンジャッシュの例に出てきたように、はじめから大きなところを狙


っていくのではなく、一点突破でイメージをつくり、次第に広げていくことが肝


要です。掘下げて掘下げて掘下げてみる...。まずはそこからブランディングを始


めてみませんか。







【新田 哲也】


2019.10.01

1位はありますか?

先日受講したセミナーで講師が次のようなことを話していました。


「ランチェスター経営の目的は、1位づくりです。長年安定している会社、


上場している会社、成長している会社は、すべて何かで1位になっています。」


1位づくりの大切さは理解していましたが、「すべて何かで1位になっている」と


言われると、なかなかインパクトがありますね。



1位以外はお客様掘起し係になってしまいますから、同質化していれば頑張れば頑


張るほど1位の企業に利益が集中していきます。ランチェスター物理の法則です。


今月は、いくつか実例を紹介したいと思います。





● ソフトバンク


携帯電話キャリア事業に参入したとき、ソフトバンクは安売りというカテゴリーで


他の携帯電話会社から差別化し、局地戦で1位をとる戦略に徹しました。


「低価格」で市場に一点集中した後は、次第に拡大し、NTTドコモを抜いて国内


携帯電話市場の首位に躍り出ます。孫正義社長は、「私はランチェスター戦略と孫


子の兵法で経営を行っている」と豪語しているほどです。




● コメリ


新潟県が本部のホームセンターコメリです。都市周辺の一般消費者は相手にせず、


郊外の農家を客層に設定しています。ゆえに店舗は郊外にしかありません。


商圏設定に気を配っており、店舗の大きさや人員配置も研究し、効率経営を行って


います。郊外では一番店のホームセンターです。




● 水族館


山形県鶴岡市の鶴岡市立加茂水族館。イルカやラッコを勧誘して客寄せを図りま


したが、来場者は減少の一途。競合店と差別化するためにクラゲ一本に絞った水


族館にチャレンジしました。魚の数やラッコの数では負けても、クラゲの種類で


は世界一の水族館となりました。赤字経営が黒字経営に転化した最たる実例です。




● セブンイレブン


全国一斉に展開した他のコンビニエンスストアと比較し、セブンイレブンは地域を


絞って1位戦略に徹しました。地域1番店となって初めて地域を近隣から拡大して


いきます。四国や九州、沖縄などは他の地域で1位になるまでは出店しませんで


した。ドミナント経営です。物流機能にも優れ効率化も図られたため、他の競合


企業と比較しても一人当たりの粗利益は抜きんでています。




● しまむら


ユニクロ等との競合を避けて、あえて郊外店に出店しています。中心部では1位で


はありませんが、郊外のアパレルショップでは断トツ1位です。一人当たりの粗利


益もユニクロの比ではない数字を生み出しています。




● HIS


旅行会社後進企業だったHISは、顧客層を絞り、取扱う航空会社を絞り、旅行先を


絞ります。はじめから全体で1位を目指すのではなく、「各個撃破主義」。


小さいカテゴリ―で1位を取り、横展開していきます。大手が注力している旅行地


は後まわし。当時は有名ではなかったビーチリゾートに、他社よりも相当安く行け


るツアーを客層を若者に絞り販売していくことで、シェアを拡大していきました。




● ハウステンボス


HIS、ハウステンボスの澤田社長もランチェスター経営を地で行きます。


1位でなければ人が集まらないと知っているハウステンボスの次の企画は逸品で


す。「ハウステンボス九州一花火大会」「アジア最大級!2,000品種120万本の


バラ祭」「世界最大級のホラータウン!」「世界一の光の王国」「魔女数世界一


へイベント」など。


2019.09.01

3つの視点

■ 3つの視点


事業戦略を構築するときには、3つの視点を客観的に観ていきます。


3Cと呼ばれ、自社(Company)の視点とお客(Customer)の視点と競合他社


(Competitor)の視点です。あくまでも主観ではなく、これらを客観視していく


ことが大切です。



観ていくのは、1つの視点だけでもいけないし、2つの視点だけでも上手くいきま


せん。自社しかみえていなければ、例えば、「毎月の借入金返済がこれだけあり、


減価償却費がいくら、役員報酬はこれだけ欲しいので、お客からの売上がいくら


必要だ。」というご都合主義となります。


3つの視点を理解していれば、このような思考に陥ることはないでしょう。







■ 自社の視点とお客の視点


よくあるのが、「自社の視点とお客の視点」、その重なるところを観ているケース


です。言い換えれば、お客のニーズを分析し、自社の経営資源(強み)を分析し、


共通するベネフィットの部分を訴求していく手法です。


一見よさそうに思えますが、しかしここには競合他社の視点が欠けています。


自社の強みが他社の弱みになっている場合は有効です。お客のニーズと自社の強み


がマッチしていても、競合他社が自社以上にその強みを持っていれば競争市場の中


ではお客は他社に持っていかれてしまうのが必然です。






■ お客の視点と競合他社の視点


次に、「お客の視点と競合他社の視点」、その重なるところを観ているケースが


考えられます。他社の強みとお客の視点が重なって、競合他社は非常に儲かって


います。その視点が強く見えてしまい、自社もそこに進出(模倣)しようとして


しまいます。


自社の経営資源が他社のそれよりも強ければよいですが、他社より弱いにも関わ


らず戦いに挑んでしまった場合、情報を分析せず負け戦に出陣しているのと同じ


状態ともいえます。複数社との競争になれば、二乗作用で敗退してしまい、投下


した資源は回収できずに終わってしまうでしょう。おこぼれをいただくような負


ける戦はしないのが上策です。






■ 自社の視点と競合他社の視点


最後は、自社の視点と競合他社の視点、その重なるところを観ているケースです。


事業戦略を構築するうえで、この視点が何よりも大切になります。


観る順番も最初です。他社と比較し、絶対に負けない資源は何か、共通項は何か、


1位になれるところは何か、そこを見極めてお客、市場にうってでます。


競合他社のイメージや、コンセプト、狙っている客層、生み出している商品やサー


ビスのイメージ...、これらの情報は以前に比べると比較的容易に得ることができる


ようになりました。



会社が行う経営活動は、経営者の思考から始まります。


となれば、業績という結果は、すべて経営者の責任です。


「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」といいます。


さらに言えば、業績を伸ばしている中小企業は敵がいない状態を作り上げます。


ぜひこれらを意識して事業戦略を思考していきましょう。


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